学校支援ボランティア

相模向陽館高等学校【教職員行動綱領】の中に、「私たちは、保護者や地域の方々等と ともに手を携え、生徒の成長と居場所づくりに貢献します。」という文言があります。 (本校ホームページ:「ディスクロージャー」の項参照) 本校では、この項目を具体化するために「学びのネットワーク」づくりに取り組む予定です。 「学びのネットワーク」とは、開かれた学校づくりの一環として、

 

  • 一人ひとりの生徒が、学校生活において地域・社会のさまざまな人々とかかわりながら学び、活動することを通じて、「自分は人の役に立っている」との自己肯定感を高めるため、
  • また、在学中から実社会のさまざまな事象に触れることを通して、卒業後に社会をたくましく生き抜く力を身につけるため、

に、地域との協働により築こうとするものです。

 

具体的には、平成22年4月の本校の第1期生入学後に、保護者の方々や地域の方々とともに、生徒のニーズに見合った、また、生徒にとって良かれと考えられる方向で、ネットワークを形成していくことになりますが、おそらく手始めとしては、相模向陽館高校への「学校支援ボランティア」の導入が話題になるだろうと思います。

そこで、ここでは、そもそも学校支援ボランティアとは何か。また、その導入に当たっては、どんなメリットと課題があるのか。さらに、ボランティア活動を行う場合に留意する点は何か。そのあたりの事情について、かつて社会教育主事として仕事をしていた私の知見や経験から、一般論として整理してみたいと思います。

ボランティアとは

そもそもボランティアとは、自ら進んで地域社会や公共的な目的のために、自己の利益を求めずにその持てる技能や労力、時間を提供するもので、その活動は社会の発展や開発を積極的にリードしていくものであるべきとされています。 この考え方は、次に記す平成4年の生涯学習審議会答申などで示された「ボランティアの原則」が基になっています。

 

  • 自発性の原則~ボランティアは公共機関や他人から強制されるのではなく、自発的意志に基づいて行われるものという考え方
  • 公共性の原則~ボランティアは特定の人たちの単なる利益につながるものではなく、社会や公共の福祉に役立つべきとの考え方
  • 無償性の原則~ボランティアは活動の見返りとして金銭的報酬など物的利益を期待すべきではないという考え方
  • 先駆性の原則~ボランティアは画一的に取り組まれるだけではなく、社会の発展や開発をリードするものであるという考え方

 

こうしたボランティアのうち、主に小・中学校、高等学校や特別支援学校の場で活動するボランティアやその活動自体を、特に学校支援ボランティアと呼んでいます。

学校支援ボランティアへの期待

平成9年以降、国が学校支援ボランティアという言葉を使用する以前から、一部において平和教育の一環で戦争体験を伝えたり、農地を提供して田植えや稲刈りを体験させたりなど、学校の教育活動に協力している保護者や地域住民はありました。 しかし現在では、学校支援ボランティアの活動内容・領域は、教科指導、特別活動、部活動、進路指導などのさまざまな教育活動支援や、草刈り、トイレ清掃や花壇、図書室の環境整備など非常に多種多様です。このように、学校支援ボランティアの活動が活発化した理由として、次の点が上げられます。

  1. 教育改革の必要性
    • いじめ、不登校や校内暴力、いわゆる学級崩壊などの教育課題に対しては、もはや学校単独での対応は困難であり、地域社会と連携して課題解決に当たる必要があること。
    • これまでの学校の閉鎖性を廃し、開かれた学校づくりを進め、家庭や地域と積極的に連携・協力を図ることが求められていること
    • 教育内容の多様化に対し、教員たちだけでは質的量的対応が難しくなってきていること
    • 課題解決学習や体験学習の実施に際して、学校外部の人材や教育資源を活用する機会が増えたこと
  2. 生涯学習の活発化
    • ア 生涯学習の成果を生かしながら、同時に子どもたちの健全な成長に貢献できることに喜びや生きがいを見いだす人が増えてきたこと
    • イ 地域住民にとって最も身近な公共施設である学校を、地域コミュニティの拠点としようという動きが現われてきたこと

このように、学校支援ボランティアの活動は、単に学校教育の課題解決の手助けをすることに止まらず、ボランティア本人の自己実現を果たすことはもちろん、学びや遊びを通じて大人たちが子どもたちとふれあう機会が増えることにもつながります。

また、学校内や近隣地域での学校支援ボランティアの活動が起点となって、大人も子どもも含めた地域社会の活性化へつながる可能性を有している、という点でも期待がかけられます。

学校支援ボランティアの課題

受け入れに当たっての留意点(学校側の課題)

活動領域の拡大

学校支援ボランティアというと、児童・生徒の前で講話をしたり、教員とティーム・ティーチングで学習活動を直接指導・支援することがイメージされがちです。しかし、学校側がそうした場面だけを想定してボランティアの導入を図ることは、ボランティアの活動領域を狭めてしまうことにつながります。実際、地域には子どもたちに披露できる特技や技能は有していないけれども、何かしら学校の役に立ち  たい、あるいは子どもたちとふれあう機会を持ちたいと思っている人がたくさんいます。そうした人たちに門戸を開くためにも、図書の整理や花壇の手入れ、施設補習や塗装、また通学安全指導や校外学習時の引率など、さまざまな場面でのボランティア活動の開発が期待されます。

活用から協働へ

学校では、現状において「地域人材の活用」と「学校支援ボランティアの受け入れ」が、ほとんど混同されていて境界が曖昧になっています。前者は、学校が企画した教育活動を行うに当たって有効・有益な地域人材を活用する場合で、学校の都合が優先されて、住民が主体性を発揮できる場面はあまり用意されていません。

一方、学校支援ボランティアの活動は、学校に関わるきっかけは学校側の呼びかけであったにしろ、活動内容そのものについては、学校側の一方的な依頼に限定されず、教員とボランティアとの協働によってよりよいものにしていく必要があります。改めて、ボランティアの自発性の原則の確認が求められます。

ボランティアへの対応

これまで、「地域人材の活用」に際しては、何がしかの謝礼が支払われる場合がありました。そのためか、ボランティア受け入れ上の最大の課題として、謝礼の問題を上げる学校が多くあります。学校予算には限りがありますので、このことがネックとなって学校支援ボランティアの受け入れがなかなか進まない一因にもなっていますが、これからは謝金や図書券に替わる対応を工夫する必要があります。学校によってはボランティア保険を用意したり、ボランティアが日常的に学校の施設を使えるように活動上の便宜を図ったり、あるいはボランティアに対するオリエンテーションや研修を実施しているところもあります。しかし、何よりも大切なのは、ボランティアとともによりよい学校をつくっていこうという熱意がボランティア側に伝わることです。

活動に当たっての留意点(ボランティア側の課題)

子ども理解

学校は公教育を行う場であり、そこにはさまざまなルールがあります。ボランティアであっても、学校教育に関わる以上、学校のこと、それ以上に今の子どもたちの現状について、ある程度の知識をもつ必要があります。もちろんこれらは学校側からの情報提供に負うところが大きいのですが、わからないことは積極的に教員に聞くようにすることが大切です。ボランティアの側も教員とのコミュニケーションや意見交換を意識的に行うことが求められます。そうした行動は新たなボランティア活動の場や機会の開拓にも繋がるからです。

学習プログラムづくり

特に学習指導面でボランティア活動を行う際には、ボランティアが「何を」「何時間で」「何を使って」「どのように」行うのか、さらに、費用はどの程度かかるのか等がわかる、簡単な「学習プログラム」をつくることが有効です。 プログラムがあれば、それをベースにできるので、それ以降の教員との事前打ち合わせを簡単に済ますことができるからです。また、ボランティア側のそうした行為は、本人の活動の広がりや深まりにも結びつきます。

 

教育委員会などの行政機関が用意しているボランティア人材バンクには、通常、登録者個々がどのような専門的知識や技能を有しているのかということと、登録者への連絡先が掲載されています。しかし学校としては、それだけの情報で安心して登録者にアプローチすることは難しいものです。そこで、バンク情報として学習プログラムが添えられていれば、その内容から登録者の熱意や姿勢などを推し測ることができますし、実際に依頼した場合の授業展開のイメージも抱くことが可能となります。自ずと登録者への依頼件数が増えることになります。

ボランティア・コーディネーションの必要性

 

学校に関わるボランティアをしたい、と思っている地域の人が増える一方、学校は地域情報の収集や地域への情報提供に不慣れなため、なかなか需要と供給が一致しません。
そこで、学校がどのようなボランティアを求めているか、また地域にはどのようなボランティアをしたいと思っている人々がいるか、その双方のニーズを把握・調整し、需要と供給のバランスを計る仲介役が必要となります。これからは、学校とボランティアとを結ぶ、ボランティア・コーディネーターの活躍やボランティア・センターの役割がたいへん重要となってきます。

ボランティア・センターやコーディネーターに求められる機能としては、学校や地域の各種情報の収集・提供や、それらに基づくボランティアの紹介・斡旋に止まらず、ボランティア活動についての教員やボランティアに対する研修プログラムの開発・実施などが考えられます。また、活動をめぐってのトラブルへの対応や、教員やボランティアの相談先としての役割も期待されます。

 

以上、学校支援ボランティアをめぐる状況と課題等について、まとめてみました。今後、相模向陽館高校がめざす「学びのネットワーク」も、単に学校や生徒のためだけではなく、保護者や地域の方々にとっても有意義なものとなるよう、取り組んでいければと思います。